開催報告:オペラ/音楽劇研究所 2021年度2月研究例会

開催報告:オペラ/音楽劇研究所 2021年度2月研究例会

▼2022年2月研究例会(第200回オペラ研究会)
  • 日時:2022年2月05日(土)16:30-18:20
  • 開催方式:オンライン開催(Zoom使用)
  • 発表者:大田美佐子
  • 所属・資格:神戸大学大学院人間発達環境学研究科 人間発達専攻 表現系講座 准教授
    早稲田大学総合研究機構オペラ/音楽劇研究所 招聘研究員
  • 題名:『オペラとミュージカルの美学: その連続と分断 – ヴァイル研究の視角から』
  • 発表言語: 日本語
  • 概要:
    クルト・ヴァイル(1900-1950)は、オペラ、教育劇からブロードウェイ・ミュージカルまで、「音楽劇」の作曲家として、様々なタイプの音楽劇を生み出してきた。コロナ状況下においても、様々なオンライン上演が行われ、実験的で社会的な音楽劇の存在感は健在である。ヴァイルの研究史でも上演史においても、亡命前と後の作品の変化から、冷戦構造のなかで「二人のヴァイル論争」が起こったが、現在では研究でも上演においても、ドイツ時代とアメリカ時代の作品における「差異」や「分断」と同時に、その「連続性」に焦点が当てられている。この問題は、「三文オペラ」やブロードウェイ・ミュージカルなどのマージナルな作品の現代での上演を考えるうえでも、作品理解にとっても、まさにアクチュアルな問題ではないだろうか。
    本発表では、オペラとミュージカルの美学の連続と分断の問題を、ヴァイル研究の視点から、以下の3つの点を中心に検討考察する。
    1. 起点としての「二人のヴァイル」論争
    2. ヴァイル自身の音楽論におけるオペラとミュージカル
    3. ミュージカルとブレヒト理論
  • 発表者プロフィール:
    東京生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科、学習院大学大学院人文科学研究科修了。ウィーン大学人文学研究科博士課程修了(音楽学)。博士論文は「芸術の要請と社会的効果 1930年代へと向かうクルト・ヴァイルの音楽劇」。専門は音楽学 (音楽文化史・音楽美学)。ヴァイル関連の論文には「アメリカで見た景色─クルト・ヴァイルの社会派音楽劇の軌跡─」(2014)や「日本の《三文オペラ》試論(1) – 黎明期の三文熱をめぐって」(2020)などがある。近年はヴァイル研究での「亡命・越境」的観点から、「越境的・対話的音楽文化史」の分野に関心を持ち、ハーバード大学のキャロル・J.オージャ教授との共同研究を行ってきた。そこでは、異なる文化や社会的背景の共有という視点から、占領期や戦後の音楽文化史を調査・研究している。共著論文には「Marian Anderson’s 1953 Concert Tour of Japan: A Transnational History (マリアン・アンダーソンの1953年の日本コンサート・ツアー:トランスナショナルな歴史)」などがある。現在、神戸大学大学院准教授。researchmap.jp/Misako_Ohta
  • 司会者 : 釘宮貴子

*コメント: 37名の参加者があった。


開催報告:オペラ/音楽劇研究所「2021年度12月研究例会」

開催報告:総合研究機構 オペラ/音楽劇研究所 2021年度12月研究例会

▼2021年12月研究例会(第199回オペラ研究会)
  • 日時:2021年12月4日(土)16:30-17:30
  • 開催方式:オンライン開催(Zoom使用)

オペラ/音楽劇のキーワーズ

  • 報告者: 荻野静男
  • 所属・資格:早稲田大学政治経済学術院・教授
  • 題名: 『現代の新しいオペラ/音楽劇と新演出』
  • 報告言語: 日本語
  • 概要:
    今世紀になって欧州および北米において上演された新しいオペラ/音楽劇を紹介するとともに、新演出について検討する。もってオペラというメディアの変容に関し考察を試みたい。

キーワーズ:伝統的オペラ/デジタル時代/新しい音楽劇/オペラの変容/新しい演出

  • 報告者プロフィール:
    早稲田大学政治経済学術院教授、早稲田大学総合研究機構オペラ/音楽劇研究所長。専門:オペラ/音楽劇研究、ドイツ語圏文化。共著『オペラ/音楽劇研究の現在―創造と伝播のダイナミズム』(2021年)、共著『キーワードで読むオペラ/音楽劇研究ハンドブック』(2017年)、論文『イングマール・ベルイマンによる《魔笛》の映画化』(2015年)、「翻訳:アンドレア・ゴットダン著『ワーグナーとその時代の造形芸術』」(2019年)など。
    •  司会者 : 柳下惠美

*コメント:27名の参加者があった


開催報告:オペラ/音楽劇研究所:2021年度11月研究例会

開催報告:早稲田大学総合研究機構 オペラ/音楽劇研究所 2021年度11月研究例会

▼2021年11月研究例会(第198回オペラ研究会)
  • 日  時 : 2021年11月06日(土)16:30-18:00
  • 開催方式 : オンライン開催(Zoom使用)
  • 発 表 者 : ニューエル・アントニー
  • 所属・資格: 早稲田大学政治経済学術院・教授
  • 題  名 : 『82のキーによるオペラ:19世紀前半のオペラとピアノの融合』
  • 発表言語 : 英語
  • 概  要 :
    音楽の世界では、オペラとピアノは長い間別々の分野として確立されてきましたが、19世紀前半、特に1830年代と1840年代の20年間に、打楽器的要素も含むピアノに「歌わせる」という発想が生まれ、この2つが融合しました。新種のピアノのヴィルトゥオーゾが登場し、演奏だけでなく、当時流行していたオペラの旋律を使って作曲するなど、聴衆を驚愕させ、しばしばヒステリー状態に陥らせることもありました。

     

    西洋のオペラもピアノも、その起源はイタリアに遡りますが、ここで取り上げる二十年の間、ヨーロッパの音楽シーンを支配していたのはフランスの首都パリでした。本プレゼンテーションでは、オペラとピアノのそれぞれの歴史を簡単に説明した後、前者の音楽が後者のレパートリーに影響を与え、鍵盤楽器の技術がそれまでとは比較にならないほど飛躍的に拡大した過程を紹介します。

    パリに集まった多くの名手の中で、鍵盤楽器の能力という点では、フランツ・リストとシギスモンド・タールベルクの2人が最も優れていたと言われています。彼らがオペラの旋律からインスピレーションを得て制作した作品を紹介します。

  • 発表者プロフィール :
    早稲田大学政治経済学術院教授。言語学者として、早稲田大学では主に英語教育と社会言語学に取り組んでいますが、今回の発表では、オペラとピアノへの生涯にわたる興味をベースにします。そのきっかけは、高校時代の3年間、イタリアのミラノに住んでいたことです。ミラノの有名なスカラ座から徒歩10分のマンションに住んでいて、オペラシーズンには頻繁に公演に出かけました。それから高校に通う傍ら、毎週ミラノ音楽院「ジュゼッペ・ヴェルディ」でピアノのレッスンを受けました。
  •  司会者 : 笠原真理子

*コメント: 18名の参加者があった


開催報告:オペラ/音楽劇研究所 2021年度10月研究例会

開催報告:早稲田大学総合研究機構 オペラ/音楽劇研究所 2021年度10月研究例会

▼2021年10月研究例会(第197回オペラ研究会)

*コメント: 21名の参加者があった。

  • 日  時:2021年10月9日(土)16:30-18:00
  • 開催方式:オンライン開催(Zoom使用)
  • 発  表  者: 江口 大輔
  • 題        目: ヴィーラント/シュヴァイツァー『アルツェステ』における「真実らしさ」
  • 発表言語:日本語
  • 概要:
    本報告では、ヴィーラントとシュヴァイツァーによるオペラ『アルツェステ』(1773)を、「真実らしさ」という観点から取り上げる。この作品は、エウリピデスを原作としている点、および「真実らしさ」を作劇上の焦点の一つに据えているという点において、キノー/リュリによる同題材のオペラ『アルセスト』(1674)や、グルック作曲の『アルチェステ/アルセスト』(イタリア語版1767、フランス語版1776)に通じている。小論「ドイツのジングシュピールについての詩論」を参照し、また、アルセスト論争やオペラ改革といったオペラ史における出来事を振り返りながら、ヴィーラントが「真実らしさ」と「驚異的なもの」の緊張関係をどのように作品中に反映させているのかを考えたい。
  • 発表者プロフィール:
    早稲田大学法学学術院准教授。専門は18世紀ドイツ語圏文学。博士(文学)。
    ジャン・パウル(1763-1825)の他、初期啓蒙主義の詩学を主に研究対象としている。「J・J・ブライティンガー『批判的詩論』における「真理」と「真実らしさ」」(2011)、「ジャン・パウル『自叙伝』における固有名「パウル」」(2019)など。
  • 司会者 : 佐藤 英

開催報告 : オペラ/ 音楽劇研究所「7月研究例会」

開催報告: オペラ/ 音楽劇研究所「7月研究例会」

▼2021年度7月研究例会(第196回オペラ研究会)

7/17(土)開催報告

※コメント: 海外からも含めて28名の参加者があり、活発な質疑応答も行われた。

概要
  • 日       時  :  2021年7月17日(土)16:30-18:00
  • 開催方式 :  オンライン開催(Zoom使用)
  • 発  表  者 :  大崎 さやの(早稲田大学総合研究機構オペラ/音楽劇研究所 招聘研究員)
  • 題       目  :  ゴルドーニ作品に見られる異邦人の表象――東方を舞台とした作品を中心に
  • 言        語  : 日本語
  • 概        要  :
    18世紀のヴェネツィアの劇作家、カルロ・ゴルドーニ(1707-1793)は、喜劇、悲喜劇、そしてオペラ・ブッファやインテルメッゾ、オペラ・セーリアの台本と、あらゆる劇ジャンルの作品を手掛けており、作品の舞台もさまざまである。なかでも18世紀のヴェネツィアで最も成功を収めた作品として知られる悲喜劇『ペルシャの花嫁』(La sposa persiana, 1753年初演)は、東方ペルシャを舞台とした作品だった。この成功には、『千一夜物語』がアントワーヌ・ガランの仏語訳(1704-1717)によって人気を博し、その後ヨーロッパの主要言語に翻訳されて、東方世界への関心が盛り上がっていたことが影響を与えたものと思われる。だが一方で、ヴェネツィアの観客が「ペルシャ」や「ペルシャ人」を個別の国や民族として認識していたのか、あるいはその認識は「東方世界、東方の異邦人」という漠然としたものであったかは、定かではない。ゴルドーニは1748年に初演された喜劇『抜目のない未亡人』(La vedova scaltra)で、主人公の未亡人に求婚するイギリス、フランス、スペイン、そしてイタリア――イタリアはまだ国家としては成立していなかったが――の4人のそれぞれの男性に、ヴェネツィアの観客に当時各国民の特徴として一般的に認識されていたであろう特徴を与えて、描き分けた。ゴルドーニは、では、東方世界の登場人物には、国または民族ごとに、特徴を与えているのだろうか。本発表では、東方を舞台とする彼の演劇作品およびオペラ台本を取り上げて、ペルシャ人、スキタイ人、トルコ人等の登場人物の特徴を考察し、ヴェネツィアの観客が一般的に抱いていたと思われる、東方の異邦人のイメージを検討したい。
  • 発表者プロフィール:
    博士(文学)。専門はイタリアの演劇と文学。論文「《ポッペーアの戴冠》の解釈をめぐって―ブゼネッロによる地上の生の賛歌」、『早稲田オペラ/音楽劇研究』 第1号(2018年)、「ゴルドーニとオペラ・セーリア―メタスタージオ作品との関係を中心に―」、『東京藝術大学音楽学部紀要』第44号(2019年)、「マルテッリアーノ詩形と演劇の音楽性―ゴルドーニによるマルテッリアーノ使用をめぐって」、『演劇と音楽』(森話社、2020年)等。東京大学、東京藝術大学、東京音楽大学、明治大学、法政大学、放送大学にて非常勤講師。
  • 司会者:荻野 静男

開催報告:オペラ/音楽劇研究所「6月研究例会」

開催報告: オペラ/ 音楽劇研究所「6月研究例会」

6月19日(土)開催報告

※コメント: 海外からも含めて46名の参加者があった。

▼2021年度6月研究例会 第195回オペラ研究会
  • 日  時 :2021年6月19日(土)16:30-18:00
  • 発 表 者:ブロッソー,シルヴィ(早稲田大学政治経済学部教授)
  • 題  目 :パリのオペラ座について―19世紀の首都における都市計画、建築、社会的完成
  • 言  語 :日本語
  • 司 会 者:大田美佐子
  • 開催方式:オンライン開催(ZOOM使用)
  • 概  要 :
    パリ・オペラ座は19世紀半ばのヨーロッパで折衷的な建築と歴史主義的なスタイルを表現している代表的なモニュメントです。19世紀半ばのヨーロッパで、オペラ座は偉大なものの一つです。ナポレオン三世(1808-1873)の政権下ではパリの都市改造がオスマン知事(1809-1891)により率いられ、オペラ座はその代名詞でもありました。コンペで選ばれた無名の若き建築家、シャルル・ガルニエ(1825-1898)によって設計されています。1861年に着工しますが1870年の普仏戦争と第二帝政(1852年~1870年)の崩壊により建設が中断しますが、それを経て1873年に建設を再度着手します。 1875年についにオペラ座がオープンし、注目を浴びるようになります。第三共和政権下のブルジョア文化の社交場であると同時に現在に至るまでの公的なレセプションの場として利用されます。
    新しい都市システムの一環として、オペラ座とその街道の有様、建築過程、当時の社会的役割について考えたいと思います。

・キーワーズ : パリ改造/ オペラ座/ ガルニエ/ 都市計画/ オスマン治世/

報告者プロフィール

ブロッソー,シルヴィ

パリの国立建築大学で建築を勉強し、ソルボンヌ大学、地理学院で都市計画を研究の後に日本の文部省給費留学生として来日。東京工業大学で坂本一成研究室に留学。
現在は早稲田大学政治経済学部教授。歴史学的視野から、また、実際の生活経験を通して、東京に於ける都市と自然との関係を研究している(場所、行動、四季の感知、等)。日本の現代建築も研究している。
Japarchi (日本の建築、都市及び景観に関するフランス語系研究者の学術ネットワーク)研究代表者。https://japarchi.fr/


開催報告:オペラ/音楽劇研究所「5月研究例会」

5/15(土)開催報告

*コメント: 海外からも含め28名の参加者があった。

▼2021年度5月研究例会(第194回オペラ研究会)

オペラ/音楽劇のキーワーズ

概 要
  • 日  時:2021年5月15日(土)16:30-17:50
  • 報 告 者  :釘宮 貴子(名古屋大学人文学研究科博士研究員)
  • 題  目:20世紀初頭のウィーンで作曲された日本を題材としたオペラ・オペレッタに見る日本人像
  • 言  語:日本語
  • 司 会 者  :中村 良
  • 開催方式:オンライン開催(Zoom使用)
  • 概  要:
    日本を題材とした音楽劇として,サリヴァンのオペレッタ《ミカド》(1885)やプッチーニのオペラ《蝶々夫人》(1904)がよく知られている。ウィーンでも20世紀以降に日本を題材としたオペラ・オペレッタが作曲されており,そこには台本作家や作曲家の日本人観があらわれている。本発表では1900年から1920年にウィーンで作曲・上演された作品を取り上げ,台本と音楽の両面から日本人を表象するために用いられた手法を考察する。日本が近代国家として西洋に認知されていく過程と並行して,作品に描かれる日本人がどのように変化したのかを検討する。

キーワーズ:ウィーン/ジャポニスム/オペラ/オペレッタ/歌舞伎/芸者/日本の歌

報告者プロフィール

釘宮 貴子

お茶の水女子大学大学院人文科学研究科演奏学講座修了。名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(学術)。現在,名古屋大学人文学研究科博士研究員。徳島文理大学音楽学部非常勤講師。ピアノ伴奏者としてオペラ・オペレッタアリアの演奏に関わる。論文『1890年代から1910年代のドイツ・オーストリアにおける音楽のジャポニスム』(2019),学会発表「F・ワインガルトナーの音楽作品における日本と西洋の融合−−オペラ《村の学校》Op.64(1919)」(2020)など。20世紀初期までのドイツ・オーストリアにおける日本に関連する音楽作品について研究しており,近年はウィーンで作曲された日本を題材としたオペラ・オペレッタの再発見と研究を行っている。